敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
歴史を大事にしながらも新しいものを取り入れ、住む人にとって居心地のいい空間を作り上げている。

ただ歴史的なだけじゃダメなんだ。今を生きる人たちにとって心地よくないと――それは私が目指す作品とも通じるものがある。

「私、次の作品はこんな家で書きたいな」

なんの気なしにぽつりと漏らしたのだが、その言葉が不謹慎だったとすぐに気づく。

「っ、ごめんなさい。そもそも次回作があるかもわからないのに」

週刊誌の騒動を受けて新作は発表できないかもしれない。映像化などの数々のメディアミックスもなくなるだろう。損害額は計り知れない。

しかし誓野さんは荷物を置いて隣に立つと、私の手をきゅっと握り込んだ。

「ここで書こう」

見上げれば柔らかな笑顔。

その優しさを受け取る価値が私にあるのか、不安になって心が揺れる。

「でも、誓野さんはもうすぐ担当じゃなくなるし」

「担当じゃなくなるからこそ、できる支え方があると思ってる。約束したよね? 翠さんさえよければ――ずっとあなたのそばにいたい」

私の手を強く握って、彼が自身の胸の前に持っていく。あまりにもドキドキしすぎて、すぐには答えられなかった。

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