敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
鼓動が高鳴りすぎて、顔を眺めるどころじゃない。爆発しそうなまでの心音を彼に聞かれてしまいそう。

「近すぎて顔が見えないかも……」

「確かに。それにこれじゃ、ただの俺へのご褒美になっちゃうな」

彼が困ったように笑って顔を離す。トレイを小脇に抱えながら去り際に、私の鼻にぴたりと人差し指の先を押し当てた。

「翠さん、隙だらけ。俺以外の男には、こんな距離許しちゃダメだよ。あっという間に食べられちゃうから」

不敵な笑みを携えて部屋を出ていく。さらに熱くなった頬から今にも蒸気が噴き出しそうだ。

許すもなにも、私の男性に対する警戒心の強さは、誓野さんが一番よく知っているはず。

……勇さんじゃなきゃ許さないよ。

それに気づいてくれない彼に、不思議と文句を言いたくなった。



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