敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「担当だって使命感より、翠さんの喜ぶ顔が見たいって個人的感情の方が大きい。どさくさに紛れて敬語も使ってないし」

思わずくすくすと笑みをこぼし「もうそれに慣れちゃいましたから」と答える。今さら敬語を使われても、ちょっと変だと思ってしまう自分がいる。

「翠さんのことばっかり考えて、バカのひとつ覚えみたいに贈り物して。迷惑じゃないといいんだけど」

「迷惑だなんて。嬉しいしか、ないです」

こちらを覗き込みご機嫌をうかがってくる顔が妙にかわいくて、きゅんとした。

男性相手に〝きゅん〟なんて擬音を使うのは初めてだ。小説でも書いたことがない。

「……ごめん、なんだか集中を削いじゃったね」

「いえ、そんなことないです。誓野さんの顔を見ていると、頑張ろうって思えるし」

って、なにを言っているんだろう私は。

慌てて「すみません」と照れ隠しすると、彼が不意に顔を近づけてきた。

視点が合わないくらい近くで、それこそ鼻と鼻がぶつかりそうなくらいの距離でぴたりと止まる。

「俺の顔なんかでよければ、いくらでも」

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