敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
昨日の会見が大問題になっているのでは、そう思うと仕事が手につかず、いっそ料理でもしていた方が気がまぎれると思ったのだ。

案の定、手を動かしている間だけは落ち着いていられた。

「……その、大丈夫でしたか?」

指先をもじもじさせながら尋ねると、彼は満面の笑みで私の頬に手を添え、額にちゅっと口づけた。

「大丈夫。全部大丈夫だったよ。説明すると長くなるから、ひとまず、そのカレーを食べようか」

私はこくりと頷く。『全部大丈夫』――まず安心させてくれる優しさが勇さんらしい。

彼が自室へ荷物を置きに行っている間に、私はキッチンで準備をして待つ。

やがて彼がシャツとスラックス姿になってやってきた。リビングのローテーブルに置かれたカレーを見て、目を丸くする。

「翠さん、まさかスパイスから作った……? そういえばルーの買い置きが切れてたっけ」

「スパイスは全部揃っていたのでなんとか。うまくいくか、イチかバチかでしたけど」

ルーが見つからず、これ見よがしにスパイスが置いてあったから。ネットで作り方を調べながらなんとか完成させた。

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