敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
日本語は結論の前に修飾語がたくさんつく。まず理由から入るのは、相手を驚かせないための配慮かもしれない。なんて優しい日本語。
玄関の段差に腰かけ靴を脱いでいると、車を施錠した彼が最後の荷物を持ってやってきた。
「もちろん一番は執筆のためですよ。最近忙しくて恋愛もしていないとおっしゃっていたので、力になれればと思って」
一番?と不思議に思い、靴を脱ぐ手が止まる。
「二番、もあるんですか?」
「それはまあ……」
彼はかかとを引っかけるようにしてスニーカーを脱ぎ、部屋に荷物を運び込みながら曖昧に笑う。
「あわよくば気に入ってもらいたいという下心はありますよ。男ですから。あ、でも急に襲ったりはしないので安心してください。ちゃんと許可は取りますので」
艶めいた眼差しで微笑んで、しゃがんだままの私に手を差し伸べる。
本気? それとも冗談? まさかこれも私を恋に落とすためのギミック?
彼の手を取って立ち上がると、彼は嬉しそうに目を細めた。
「二カ月間、よろしくお願いします。翠さん」
そう甘く囁いたあと、持ち上げた私の手を口もとに持っていく。
手の甲に音もなくなにかが触れた。それが唇だったのか鼻先だったのかはよくわからないが、たぶん……。
――いや、いきなり許可がなかったんですが。
胸の奥で警戒と高揚を知らせる銅鑼が鳴る。
この浮いたり沈んだりする忙しない感情はどうやって描写しようか、うまく言語化できる気がしなくて、やっぱり前途多難な気がした。
玄関の段差に腰かけ靴を脱いでいると、車を施錠した彼が最後の荷物を持ってやってきた。
「もちろん一番は執筆のためですよ。最近忙しくて恋愛もしていないとおっしゃっていたので、力になれればと思って」
一番?と不思議に思い、靴を脱ぐ手が止まる。
「二番、もあるんですか?」
「それはまあ……」
彼はかかとを引っかけるようにしてスニーカーを脱ぎ、部屋に荷物を運び込みながら曖昧に笑う。
「あわよくば気に入ってもらいたいという下心はありますよ。男ですから。あ、でも急に襲ったりはしないので安心してください。ちゃんと許可は取りますので」
艶めいた眼差しで微笑んで、しゃがんだままの私に手を差し伸べる。
本気? それとも冗談? まさかこれも私を恋に落とすためのギミック?
彼の手を取って立ち上がると、彼は嬉しそうに目を細めた。
「二カ月間、よろしくお願いします。翠さん」
そう甘く囁いたあと、持ち上げた私の手を口もとに持っていく。
手の甲に音もなくなにかが触れた。それが唇だったのか鼻先だったのかはよくわからないが、たぶん……。
――いや、いきなり許可がなかったんですが。
胸の奥で警戒と高揚を知らせる銅鑼が鳴る。
この浮いたり沈んだりする忙しない感情はどうやって描写しようか、うまく言語化できる気がしなくて、やっぱり前途多難な気がした。