敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
ふとこちらを見て、人魚が寝そべったようなポーズをしている私に眉をひそめた。

「……誘ってます?」

「や、違っ――」

「足、痺れましたか」

わかっているくせにからかうとは人が悪い。こくこくと頷くと、彼はテーブルの上にトレイを置きながら苦笑した。

「雰囲気作りと言っても、正座でパソコン作業は厳しいかもしれませんね。テーブルとチェアを持ち込みましょう」

「いえ……大丈夫です。かつての文豪たちもこうやって書いていたはずですし」

「どうでしょう? 大正、昭和ともなれば洋風建築が普及していたはずですから。まあ、間違いなくパソコンではありませんでしたね」

それは確かに。原稿用紙で書いていた文豪たちは本当にすごいと思う。現代の作家はデリートやコピペ、文書内検索、一括置換がないと作品なんて書けないと思うから。

そんなことを考えつつも足の痺れにもがいていると、誓野さんが私のふくらはぎをむんずと掴んだ。

「ひゃあっ」

「失礼」

掴む前に言うべきでは?

とはいえ、誓野さんがマッサージをしてくれたおかげで痺れが治ってきたのは確かだ。

「ところで、そのお花は……」

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