敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません！～干物女な小説家は容赦なく激愛される～

「そういう意味では、料理は好きですよ。大切な人に振る舞うとなれば、なおさらモチベーションが上がります」

なるほど。大切な人とまで言ってもらえるなんて光栄だ。彼は本当に仕事熱心だなあ。

納得して黙々とサンマをほぐして口に運んでいたら、誓野さんが不意にぽつりと漏らした。

「〝彼〟とカヲルも、こうして一緒にご飯を食べたんでしょうか」

私は小さくため息をついて、首を横に振る。

「それはないと思います。身分が違うので食事は別々だっただろうし、〝彼〟はおいしい炊き込みご飯もサンマも食べられなかっただろうな……」

白くてふわふわで照りのあるサンマの身を持ち上げながら切ない気持ちになる。

「……でも、カヲルは〝彼〟に食べさせてあげたかったでしょうね」

私だったら、誓野さんだけ別室で簡素なご飯を食べていたら嫌だもの。

「誰もいない隙に、〝彼〟を呼び出してこっそりとあげていたのでは？」

誓野さんがいたずらを画策するみたいな顔で言う。

「でもあの時代、自分の食事を男性に分け与えるなんて結構普通じゃないっていうか」