敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「執筆の邪魔をしてすみませんでした。昼食ができたらお呼びしますね」

そう言って彼は部屋を出て襖を閉める。

誓野さんのおかげで奉公人に感謝をするヒロインの気持ちなら高い解像度で描けそうだ。

「よし」

きゅっと唇を引き締めると、私は集中してキーボードを叩き始めた。



その日の昼は鍋焼きうどん。そして夜は炊き込みご飯に焼き魚と汁物、小鉢が二種類。いずれも手が込んでいた。

「脂ののったいいサンマが手に入りました」

「わぁ、秋ですねえ」

山菜ときのこがたくさん入った炊き込みご飯もおいしそう。

しかし、料理を作るのはもちろん、毎食メニューを考えるだけでも大変だろう。

「もっと簡単な食事でもかまいませんよ、冷凍食品とかフル活用していただいても」

「問題ありませんよ。今の俺の仕事は、翠さんのお世話しかないですから。簡単なパソコン作業くらいはしていますけど、あらかた免除してもらっているので」

「でも、お料理が好きじゃない方だったら、それはそれで苦行でしょう」

私だったら、お料理するくらいなら仕事をしている方がマシだと思ってしまう。

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