敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「なるほど、秘密の共有か。じゃあ、吉川さんには内緒にしておきましょう」

満足したのか、どことなくご機嫌な様子でサンマを食べ進める誓野さん。

うまいように弄ばれた気がしなくもないが、カヲルの心理描写を深堀りすることには成功した。新作の執筆は進みそうだ。



翌日、大柄の紅葉が全体にあしらわれた紅色の小紋を纏い、フルメイクをして庭に出た。

紅葉が綺麗に色づいているうちに写真撮影をさせてくださいと頼まれたのだ。

庭といっても綺麗に整えられているわけではない。飛び石があるおかげでかろうじて歩ける程度で、周囲には雑多な木々が茂っている。

とはいえ、どれも紅葉する種類のようで、規則性のない色とりどりの木々はむしろ華やかで幻想的でもあった。

「翠さん。そこで首だけこちらに向けてもらえますか。ええ、その感じで。すごく綺麗です」

葉が赤く染まった木々の前で、肩越しに振り向く私。ガンガンにシャッターを切る誓野さん。

「あの、本当に写真集とかやめてくださいね?」

「……出せば売れると思いますけどね。一儲けできるかと」

「そこで儲からなくていいです……」

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