わたしのスマホくん

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電源がつかなくなって、5日が経った。

毎日、お母さんたちから体調が悪いのかって聞かれるほど、わたしはひどい顔をして過ごしていたらしい。口ごもるわたしのかわりに、事情を知るヒロが誤魔化してくれていた。

また休みをむかえてひとり留守電をしていても、今はだれの声もしなくて。
毎日のように5台分、電源ボタンを押し続けているけれど、だれも反応は見せないまま。
もうメッセージがきてないかどうかなんて、気にしてる余裕はなく、リビングの机に並べたスマホくんたちを、ただ見つめるだけで時間が過ぎていく。

「……人化出来なくなった、なんて携帯ショップに持っていけないもんね」

ほどよく充電を繰り返しながら、様子を見てきたけど、もう解決方法はないのかな。

碧くんを手に取り、わたしはソファへ横になった。

「……碧くん」

真っ暗な画面に呼びかけても、返事はない。

【おかえり】とか【ありがとう】とか、スマホの姿でも会話が出来ていたのに。

……顔が見たい。声が聞きたい。


「会いたいよっ……」


碧くんがやってくれたように額をつければ、ひとり涙があふれていった。
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