わたしのスマホくん


──ガサガサと物音がして目を開けた。
一瞬にしてあわい期待に体を起こすも……


「起きた?青空がソファでお昼寝なんて珍しいわね」
「お母さん……」

時計を見ればまだ15時だった。

「洗濯、雨降ってるからお願いって青空に送ったんだけど返信なかったから。休憩時間で戻ってきたの。寝てたから気付かなかったのね」

ソファのそばにある洗濯物の山が目に入る。
今、メッセージ見れないから……申し訳ないことをしてしまった。

「ごめん」
「いいのいいの。そういう時もあるし、留守番たのんでるんだから。それにお父さんも帰ってきてたみたいだし」
「お父さん?どうして?」

こんな早く帰ってくるなんて。
……ん?

机の上に置き手紙があって、わたしは紙を手に取った。
"ヒロの携帯を買いに行くため一時帰宅しました。青空は寝てたので起こさなかったよ"と。

「ヒロ、携帯買うの?」
「今日ね、ヒロが練習動画撮ってる時にボール当たって画面こわれちゃったみたいで。練習につきそったお父さんと携帯ショップに行ってるの。もしかしたら新しいのにするかもって」

つきそった……ああ、今日は練習見に行くとか言ってたっけ。スマホくんたちのことで話が半分になってる。

「いいんじゃない?ヒロのもともとひび割れしてたんだし。……それよりわたしのスマホ知らない?」

碧くんは手の中にあるけど、机にはお父さんからの置き手紙しかなかったから。
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