勇気の歌(Summerloveの前の話)

駄目だと言いたかった。



お前の家族が巻き込まれるかもしれないと。



だけども、早羽は言った。




「学校の生徒には安全で明るい世界出歩いてほしいって思ったんだ。あの事件があってから。子供にも」




そう書かれていて。



それは相当の覚悟があってから、書かれたものなのだろうなと思うしか他なくて。




肯定することしかできなかった。




裁判が始まった。



案の定雪は何を考えているか無表情だった。



代理人として、傍聴はしていたが苦虫をつぶしたような苦しい感情がよぎる。



だけども、早羽の姿はもっと酷かった。



ボロボロの包帯だらけ。



全身手術を施した、身体は皆を震わせた。




裁判は案の定、雪が不利になってゆく。




そして、早羽はーー「もう、俺はお前を友を心の内側から破壊した悪魔としか思えない」と吐き捨てる。



雪は最後の最後まで鼻で笑っていた。



どうして雪はそこまで残酷になれるのか。




彼の話を聞くと、「先生と生徒の絆の愚かさを皆に証明したかったから」と。



その真偽の意味は取れない。



その言葉を聞いていられないと、判断した裁判官は雪に死刑判決を下したからだ。



裁判が終わった時、俺は早羽とすれ違った。



あの時落ちた瞬間みたいに、口元で「さようなら。友」と話したのを聞いて。




もう完全に彼は遠い所に行ってしまうんだと、思ったのだ。




案の定、早羽は先生を辞めてこの地を去った。
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