勇気の歌(Summerloveの前の話)
でも課題は山々だった。
一番酷かったのは、受験生が誰一人と入ろうとしない懸念が成されたことだろう。
受験生が入らないということは、学校経営が難しい。
廃校になる。
だが打開策を打とうにも、八方塞がり状態だった。
だがーーー。
「勇気がーーー歌い手として、百万再生された楽曲を出したぞ!!」
生徒の中で噂がたった。
それは嘘紛れもなくホントで。
キャッチーな音楽と、心の響く歌詞が人気に。
中高生でも人気な歌い手になったという。
歌の名前は「勇気」。
名前そのままじゃないかと、苦笑したが。
「僕ーーー、助けてくれた三人のために顔出しして、紅白に出るよ」
大ヒットしたので、紅白内定が決まったのをいいことに、職員室でそう話してくれた。
「いいのか?何を言われても?」
「元はと言えば、僕の責任でもあるから、償いたいんだ」
真剣な眼差しを見て、こいつはホントなんだろうと確信した。
校長は舌打ちして、イライラしていた様子を見せていたが。
放課後、帰る時に母親と出会った。
カフェで話をすることになり、衝撃を知る。
実はあの家庭訪問の時、勇気は父親の形見をつけていたことにお母さんも疑問に思っていたそうだ。
勇気が寝ている時に、こっそりと外してみるとーーー手首に深い傷が。
家庭訪問に来る直前まで、そんな傷は無かった。
だとしたら、勇気は勇気は死ぬつもりだったのだろう。
包丁かカッターで、手首を切って自殺しようとしていたーーーかもしれない。
俺が助けていなければ、来ていなければ、彼はこの成功をつかんでいなかったのだ。
程なくして、勇気は紅白に出て歌を披露した。
柔らかな歌声で、包み込むような、優しい彼の心を表していたいい歌だった。
それを、ボロボロになった松阪と隣で聞いていた。
楽しそうに手を叩いて、言葉にならない笑い声で。
「ぼくはね、がっこうのせんせいだったんだよ」
「そうか、凄いな」
「それでね、やくそくしてほしいことがあるんだよ」
「なんだ?」
「せんせいなんでしょ?ずっとつづけてね」
子供のようになってしまった松阪を眺めながら、言葉に詰まって。
「あぁ」
そう答えた。
そして、松阪はーーー度重なるストレスで亡くなった。
その約束を継ぐように、転勤になり今の高校にいる。
この話を全てし終えた。
友香はどんな顔をして、何を思って、どうするのだろう。
だけども俺はーーー変わらないし、教師を辞めたいとは思はない。
それは、友との約束だから。
たった一人の、天国に行った友のーーー。
fin

