血だまりに咲く。 ~序
気が付いたら体が引っ張られ、桜井さんとの距離がゼロになる。胸元に顔を押し付けるようにかたく閉じ込められていた。

思い出す。このひとに慰められるのはこれで二度目。一度目は兄さんがいなくなった時。・・・不思議だ。失いたくない誰かと別れるとき、どうしていつも傍にいるんだろう・・・。

「要の分まで俺がお前といる。捨て猫みたいに泣くな、・・・テン」

桜井さんにそう呼ばれるのがひどく懐かしくて、余計に切なくなった。

「ここにいればいい、どこにも行くな。お前の家は俺だ」

静かに染みた。元気でね、と笑った若より優しく聞こえた。涙が止まらなくて困った。

「・・・泣き虫は変わらねぇな」

仄かに笑んだ気配がして。







血の繋がった家族も、故郷と呼べるものもわたしにはない。どんなに願っても叶わない。

ないのは慣れた。諦めれば済んだ。欲しがらない、望まない。ずっとそうして生きてくんだと思っていた。

・・・怖かった、差し出された手を離されるのが。また失くすくらいなら夢は見ない。

桜井さんとのあいだに線を引く。向こう側には行かない。・・・行けない。

桜井さんを好きになったりしない。

近付かない。

もう誰も好きにならない。

・・・二度と。





FIN


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