カラフル

協力と勇気

「ごめん。遅なった」

 息を切らしながら目の前に現れた陽の額には、少し汗が滲んでいた。4階の生徒会室から中庭まで走ってきたのだろう。


「無理して来なくていいのに」

「俺が来たいんやから、ええやん」

 ボソッと呟いた私の可愛さの欠片もない台詞を華麗にかわして、陽は隣に腰を下ろす。


「お昼は?」

 制服のシャツを指で摘まみ前後させながら、風を通している陽に向かって尋ねる。


「話し合いしながら食べたで。あ、もしかして心配してくれとるん? ほんまやっさしいなぁ凛ちゃんは」

 陽がニヤニヤと口角を上げて私を見る。その様子に呆れて顔を背けた。


 LHRのあった日からあっという間に1週間が経ち、体育祭に向けて準備が本格的に始まっていた。


 実行委員の陽は今日の昼休みも召集がかかっていた。

 蘭から聞いた話によると、陽は不運にも実行委員会の中で”学年責任者”を務めることになったらしい。仮にも転入生だというのに容赦ない学校だ。――まあ、当の本人は全く転入生らしくはないのだが。


 だから彼はここ数日、昼休みだけでなく、休み時間も放課後も、終始いろんな場所を駆け回っていた。相当に忙しいはずなのに、それでも、こうやって時間を見つけては私に話しかけにくる。
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