隣の席の室井くん①
室井くんが去ったあと
ぽつんと残されたアタシと
目の前でまだ目を丸くしている羽鳥くん。
そして、いつの間にか
事の次第を見ていたらしいクラスメートの視線を浴びる。
「・・・いや、今のは・・・」
思わず口を開いたアタシの言葉を
「・・・ぷ」
と、羽鳥くんの笑い声が遮った。
くくく、と笑い出した羽鳥くんは
「室井も・・・日吉さん並にわかりやすいのな」
そう言って口元を抑える。
「え?え?なになに、今の!日吉さんて室井と付き合ってんの!!?」
「え?マジかよ!!嘘だろ!!?」
「てか、室井ってあんな感じなん?」
「意外と肉食!?」
アタシと羽鳥くんを囲んで
近くにいた大道具班の男子が口々に囃し立てる。
「いやいやいやいや」
ちょっと!!室井くん!!
どうしてくれるの!!この状況!!
バレちゃった!
バレちゃいましたよ!!
アタシがあわあわしていると
「かーけーるーーー!!!!」
開け放たれた教室のドアから、お馴染みの金髪頭が駆け込んできた。
「ん?あら?日吉チャンど~したん?そんな囲まれて。あ!!ハーレム!!?やるなぁ日吉チャン!!ヒャヒャヒャヒャ!!」
あぁ・・・もう
今すぐにでもこの空気の読めない金髪ヒャヒャヒャを沈めてやりたい。
「なぁなぁそれより翔は?翔いねぇじゃん、どこ行ったん?」
何も気にする様子もなく
ズカズカと教室に入ってきた相沢くんはいつもの調子でキョロキョロと教室を見渡す。
「室井くんなら今さっき帰ったよ。バイトだって」
「えぇ!!?マジかよ!!ちっくしょ~逃げやがった!!!!申請明日までなのに!!」
舌打ちをしながら足を踏み鳴らす相沢くんは、恐らく今日もバンド勧誘に来たんだろう。
いや、もう諦めなって。
あの調子じゃ室井くんはやらないって。
「なぁなぁ亮介!!」
アタシを囲んでいた男子たちが今度はその矛先を相沢くんに変える。
「室井と日吉さんって付き合ってんの?」
「ち、ちょっと!!」
別にいいじゃん!!
アタシが誰と付き合ってよーが!!
ほっとけ!!
相沢くんは、少しだけ
「あ?」と目を丸くしたかと思うと
あわあわしているアタシを見て、ニヤリ、と嫌な笑みを見せる。
…わ~嫌な予感
「ヒャヒャヒャ!!そーそー!!付き合ってる付き合ってる!!らっぶらぶのキュンキュンなのよ!!」
「ちちちちょーっと!?相沢く〜ん!?」
なんてぺろっと言ってくれるかこの男!!
しかもらっぶらぶのキュンキュンって
なんだソラ!!!!
相沢くんの発言に
囲んでいた男子たちがキョトンとした表情になるも
次の瞬間
「・・・マジか、あの室井が・・・?」
「らっぶらぶのキュンキュン?」
「え~?なんで室井に彼女がいて俺らにいねぇの?」
「納得いかねぇ~」
コラコラコラ。それは失礼だろう
ーーーーその時、
ザワザワと男子の輪の中に背後からユラリと近付く影、それに気付きアタシは一歩後退する。
「ちょっと男子!何をいつまでも遊んでんのよ。忙しいっつってんだからとっとと働いてよ!それと純!アンタも何回呼ばせりゃ気が済むのよ!」
「ご、ゴメンよ、さっちゃん」
両腕を捲り、髪の毛を上に束ねたセクシー隊長が仁王立ちでまくし立てる。
恐ろしい。恐ろしすぎるよ。
「アンタも!!!!邪魔すんならとっとと帰りなさいよ!!」
「ヒャヒャヒャ!さっちゃんの罵声痺れる~!!」
さすがドM。
皆がさっちゃんに怯える中彼だけはいつも通り呑気である。
・・・最早、彼しか彼女には逆らえまい。