歪んだ月が愛しくて3
希の秘密
立夏Side
「……何これ?全然終わんねぇんだけど」
夏休み初日の今日。
俺にしては珍しく朝から机に向かって課題に取り組んでいたのだが、悲しいことに全くと言ってペンが進まない。
スランプ中の小説家並みに課題の文字が全然頭に入って来なくて、1時間で2ページしか進んでないとかもう詰んだとしか言いようがなかった。
やる気はある。だって今回の夏休みは色々と予定が盛り沢山だから面倒なことは先に済ませて置きたいのだ。それに会長とも一緒に出掛けようって約束したから…。
……いや、別に、楽しみにしてるとかそんなんじゃないよ。
一応約束はしたけど元々多忙な人だから流れるかもしれないし、やっぱ行きたくないって言われる可能性だってあるわけだし。
ただいざ出掛けるってなった時、課題が残ってると心置きなく楽しめないかなって思ってそれで…。
「……ダッサ」
何言い訳してんだろう俺…。
自分を守るための言い訳とかクソダサ過ぎる。
……楽しみだよ。
我ながら女々しくカレンダーなんか眺めちゃうくらいにはね。
だから出来れば一緒に出掛けたいと思ってるけど。
(でも、間に合うかな…)
そんな不安が脳裏に過って消えてくれない。
嫌な予感が消えない。
ピンポーン
その音にビクッと肩が跳ねた。
意外に大きいインターホンの音が俺の思考をクリアにする。
突然の来訪者に身構えながらもディスプレイに映し出された人物を見て納得したと同時に昨日の罪悪感が蘇って来た。
……気まずい。
向こうから訪ねて来たってことは話があるってことだよな?
(まあ、あの子らしいけど…)
本当は触れられたくないくせにあえて自分から乗り込んで来るなんて、自分から落とし穴に入って行くようなものだ。
分かってんの?
自分から俺のところに来るってことは、自分の秘密を俺に打ち明けるってことなんだよ?
そんなこと俺には出来ない。
そんな勇気、俺にはないよ…。