歪んだ月が愛しくて3
―――チン、と。
「あ、来た」
エレベーターの到着を知らせる音に俺達の視線は自然とそちらに向く。
ドアが開くと同時に吸い込まれるように乗り込む希を一歩下がって見送る。
「じゃあ約束二つな!絶対忘れんなよ!もし破ったら汐と同じ目に合わせるからそのつもりで!」
「はいはい」
「それと前に海行こうって話したやつ!あれも忘れんなよ!夏休み中に決行!連絡するから待ってろよ!」
「分かったからもう行きなよ。頼稀に怒られるよ」
「それはヤバい!」と言いながら必死で開閉ボタンを連打する希に手を振って俺達は別れた。
エレベーターのドアが完全に閉まるまで手を振って、動き出した音に耳を傾けながら自然と溜息が溢れた。
はぁ…。
何か、一気に疲れた。
この数日で色んなことがあったせいか頭ん中がぐちゃぐちゃだ。
てか…、
「俺ってそんな分かり易い…?」
『自分でもそう思うよ。俺だって本当はこんなこと聞くつもりなかったけど、何か最近の立夏元気ないからちょっと心配でさ…』
元気ないって何?どこが?
表情を見繕うことに関しては結構自信あったのに、こうもあっさり見透かされるとはな。
お粗末にも程がある。
……でも、ごめんな。
「その約束は、守れそうにないや…」
ははっ、と乾いた笑みが漏れる。
守れない約束はしない主義だったけど、仕方ない。
だって俺は嘘吐きだから。
自分を守るための嘘も、相手を拒絶するための嘘も、もう慣れっこなんだよ。