歪んだ月が愛しくて3
それから希の恋愛相談…もとい惚気話を延々と聞かされた後、俺は希をエレベーターホールまで見送ることにした。
「じゃあ頼稀を待たせてるからもう行くな。あ、くれぐれも俺が女だってことは皆には内緒にしてくれよ、約束な」
「言わないよ。てか、これから帰省するんだっけ?頼稀と一緒に?」
「おう。頼稀とは家がお向かいだからいつも一緒に帰ってるんだよ」
「そっか…。気を付けてね」
まあ、頼稀が一緒だから気を付けることもないと思うけど。
……あ。
「そう言えば希達の実家って確か東都の白羊って言ってたよね?」
「うん、そうだよ。それがどうかした?」
「いや、ちょっと気になっただけ」
「………」
「……ん?何?」
「あのさ、今度は俺から質問していい?」
「いいよ、何?」
何気なく返した言葉に希は一呼吸置いて、そして真っ直ぐに俺を見てこう言った。
「立夏は、どっか行っちゃうの?」
何も、言えなかった。
「……え、」
全く予想していなかったその問いに、俺は即答出来なかった。
それどころか遅れて出て来た言葉はあまりにもチープで、ちゃんと笑えてたかも疑わしい。
「俺達の前から勝手にいなくならないよね?俺達ずっと友達でいられるよね?」
何をどう思ってその結論に行き着いたのだろうか。
そして何故かいなくなることを前提に話が進んでる気がする。
「どうしたの急に…。何か希らしくない質問だね」
「自分でもそう思うよ。俺だって本当はこんなこと聞くつもりなかったけど、何か最近の立夏元気ないからちょっと心配でさ…」
「心配って何の?家出?てか、いきなり何言い出すのかと思ったら急にシリアスモード入ってんだもん、希ウケんね」
俺がいなくなる?
友達じゃなくなるって?
そんなの…、
「……じゃあ、いなくならない?俺達ずっと友達でいられる?」
「いなくならないよ。友達もやめない」
「本当?」
「本当だよ。寧ろ俺の方こそいつ皆に見限られんじゃないかってヒヤヒヤしてんだけど」
安心させるように微笑んで、希の頭を一撫でする。
「俺に友達の大切さを教えてくれたのは希達でしょう。だったらちゃんと責任持って最後まで友達でいてよ」
ニィッと、俺にしては珍しく歯を見せるように笑えば「っ、約束だぞ!」と嬉しそうな笑顔が返って来た。
ああ、可愛いな。
そうやって笑うと本当女の子にしか見えなくて困る。
希ってそう言うことに疎そうだからちょっと心配なんだよな…。
でも当の本人はそんなことお構いなしにお返しと言わんばかりににいっと笑って見せ付ける。
ほら、そう言うところ。