婚約者が浮気をしたので即別れることにしたら、溺愛されることになりました。
 あの時、私がニールの話を聞いていたら、これはすぐに解決出来た話だったのだ。

 ……なのに私はすぐ、別れると告げた。ニールの言葉だって、聞くこともなく。

 どうしても女癖の悪いお父様のことが頭によぎってしまって、我慢出来なかった……ニールは私のことを大事にしてくれていたし、疑われるようなことを今まで一度もしなかったのに。

 私が……ニールを信じて、彼の話をちゃんと聞いていれば……。

「良いんだ。本当にごめん。ジェマ。君からはご両親の話を聞いていたから、誤解してしまっても無理はない。それに、あの時は僕も何が起こったかわからなかったんだ」

 ニールは私の頬に手を伸ばしたので、私は彼の赤くなった頬に手を伸ばした。

 ……信じられない。

 ニールは何も悪くないわ。私と婚約しただけで、こんな目に遭ってしまうなんて。

「……そうよね。いきなり見知らぬ女性から頬を張られたら、そう思ってしまうと思うわ」

 私が彼の言葉に頷けば、ニールははあと大きなため息をついた。

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