婚約者が浮気をしたので即別れることにしたら、溺愛されることになりました。
「いいえ……ニールは何も悪くないわ。悪くないのに……痛かったでしょう」

 赤くなっている。ここまで赤くなるなんて、信じられない。

「これは……まったく、痛くない」

「え?」

「君に軽く叩かれた右頬の方が、よほど痛かった……痛すぎて、別れましょうと言われた時に、何も言えなかった。それに、今夜を逃せばすぐに婚約は解消されてしまい、会えなくなると思って焦ったよ。だから、犯人のメアリーを連れて、オルセン伯爵邸へ行こうと思って居たんだ。誤解を解くには今夜しかないと」

「ニール」

 私は何も言えなくなった。

 ニールと別れなければならないと思った時、私は本当に辛かった。けれど、浮気者と一緒に居れば、それが一生続くのだ。

 お母様のようには、絶対になりたくなかったから。

「ジェマ。君を愛している」

「ニール。私もよ」

 私たちはぎゅうっと強い力で、抱き合った。唇を合わせてから、もう一度抱き合った。

 ああ……あの時、すぐに帰らなくて良かった。

 それに、メアリーの存在も、まったく知らなかった。知らなかったのよ……いえ。

「……あの、ニール」

「何?」

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