冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~
冬美さんの部屋に入り、彼女が明かりを点けるやいなや、俺はボストンバッグをドサっと床に置き、冬美さんを引き寄せると、ぎゅっと強く抱き締めた。

「俺、早くこうしたかったんだ」
「私も、してほしかった」

冬美さんも俺の背中に手を回し、俺の胸に頬を寄せた。

「もしかして、亮平に惚れちゃったか?」

なんて、心にも無い事を聞いてみた。いや、正直なところ、全く無いわけでもない。少しの不安が俺にはあった。ヤキモチと言われれば、それまでなのだが。

すると冬美さんは、驚いた様子で俺を見上げ、

「まさかでしょ。私は、まーくん一筋なんだから……」

と、百点満点の答えをくれた。頬を膨らませ、怒ってるような、あるいは拗ねてるような冬美さんが可愛くて、そんな彼女を俺は困らせてみたくなった。

「本当かなあ。俺にキスしてくれたら、信じるよ」

「いいよ。でも恥ずかしいから、目をつぶってくれる?」

「わかった」

俺は素直に目を閉じた。だが、冬美さんの甘い吐息が俺の顔に掛かった瞬間、俺はパッと目を開いた。

「もう、まーくんの嘘吐き!」
「冬美さんがどんな顔でキスするのか、見たかったんだ」

そう。俺はキスそのものより、その瞬間の冬美さんを見たかったんだ。そして、間近で見た冬美さんの表情は、期待以上に俺をドキドキさせた。

「もう……きゃっ」

拗ねて文句を言う冬美さんを、俺はひょいって感じで抱き上げた。いわゆる”お姫様抱っこ”だ。
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