冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~
「私がここに来たのって、誠が高校の時以来よねえ……」
俺は姉貴のその言葉に、顔がカーッと熱くなるのを感じた。姉貴はたぶん、いや間違いなく、あの事を忘れてはいないだろう。俺が、姉貴に抱き着き、迫った事を。もちろん未遂に終わったが。
「私ね、あの時以来、誠にきつく当たるようになったんだけど、気付いてた?」
やはり姉貴は憶えていた。だが、まさか姉貴からその話をするとは思ってもなく、俺は居たたまれなくなった。
「それは……気付いてた。姉貴には、すっかり嫌われたと思った」
俺は姉貴の顔を見てられなくて、目を反らして下を向いた。
「そうよねえ。私ったら、ずいぶん酷い事ばかり言ってたもんね? バカとか、不細工とか……」
「いや、そこまでは……」
言われてないと思う。いや、言われたかも。
「そうだっけ? でも、あなたに辛辣な態度をとってたのは確かだと思う。でもね、あれは本心じゃなかったの」
「えっ?」
「あなたにきつく当たる事で、あなたを拒絶しながら、自分にブレーキを掛けていたんだと思う」
「それって……」
顔を上げて姉貴を見たら、今度は姉貴が俺から目を反らした。