冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~
迫りくる危機
週が明け、冬美さんと俺は一緒にマンションを出て、会社へ向かった。

冬美さんは濃紺のビジネススーツを着込み、アイボリーのショルダーバッグを肩に掛け、黒のハイヒールを履いている。首から下だけを見れば、当たり前だが以前の”主任”だ。

だが首から上は、髪はフワッと肩に掛かっており、黒縁眼鏡は跡形もなく、ばっちりメイクした顔は、綺麗な上に可憐さがあり、全身を見れば、往年のハリウッドスターを彷彿とさせた。

そんな冬美さんにべったりくっ付くのははばかれ、しかし、しっかりボディーガードしなければならない俺は、冬美さんに付かず離れずの距離を取って歩いた。

会社に着くと、やはり冬美さんは男性社員の視線を集めた。

『こんな美人、内の会社にいたっけ?』
『秘書課の人かな』

そんな声が、聞こえるようだった。

エレベーターを降り、職場へ行くと、課長と田代と上原の3人がいた。

俺はいつも通り「おはよう」と言って自席へ向かったが、誰からも挨拶が帰って来なかった。

それもそのはずで、3人揃って冬美さんを見て、口をポカンと開けていた。

やはり誰も冬美さんが”主任”だとは気付かないようだ。実はこの瞬間を、密かに俺は楽しみにしていたのだ。
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