ひとつ、ふたつ、ひみつ。

一時間目の終了を告げるチャイムが鳴って、私はひとりで逃げるように教室へ向かった。

あの後は、結局話が続かなくて。
ふたりでずっと、手を繋いだまま座っていた。

真尋くん、どうしたんだろう。

いつもニコニコしていて、冗談ばっかり言って。
くっつきたがりで、何度注意をしてもやめてくれない。

さっきの真尋くんは、そんないつもの彼とは違っていた。

「……」

廊下で立ち止まり、握られていた手を見つめる。
体温を、思い出す。

黙る横顔は、別人みたいで。でも、真尋くんは真尋くんで。

学校にいる姿を、見慣れないからかもしれない。

うん、きっとそう。

こんなにも、ドキドキしてしまうのは。
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