ひとつ、ふたつ、ひみつ。
ただの出かける約束だったことに拍子抜けしてしまって、あっくんが隣の部屋に帰っていくのを見送っても、私はその場に立っていた。

び、びび、びっくりした……!

すっごく()めて言うから、その間にいっぱい考えてしまった。

ドッドッドッと、コンマ(きざ)みで胸を叩く音を、手で押さえつける。

ドアノブに触れる手が、震える。
上手く回せないでいると、力を入れていないのに勝手に扉が開いた。

「こまり? 入んないの?」

周りに誰かがいる可能性を配慮(はいりょ)してくれたのか、真尋くんが扉の隙間(すきま)から遠慮がちにささやく。

「は、入る入る。ただいま。そこにいたんだね」

「うん、鍵が開く音が聞こえたから」

それでわざわざ、出迎えるために玄関まで来てくれたのかな。

えー、なにそれ、可愛すぎる。

真尋くんは私の手に自分の手を添えて、部屋に引き入れる。

「おかえり」

パタン、と扉が閉まる。

お互いの距離が縮まって、一際(ひときわ)心音がドッと大きくなる。
真尋くんの世界では、「おかえり」は頬にキス。

「まっ、真尋くん、だめ──」

「どうしたの? 手、赤くなってる」

「──え」
< 145 / 276 >

この作品をシェア

pagetop