ひとつ、ふたつ、ひみつ。
今夜は、満月。

近くに、人が作り出した夜景はひとつもない。

ポカーンと開いた口が塞がらない。

一秒前まで、家にいたのに。
周りを、高いフェンスで囲まれている、ここは。

「学校の……屋上?」

「そう。さっきカーテン開けた時、月がまん丸だったから。ここだとよく見えそうだと思って」

「も、もう! ワープするなら、そう言って! び、びっくりしたぁ!」

予告もなく飛ばされるとは思わなくて、今さら汗が()き出してきた。
何が起こったのかと思った。

「ごめんごめん。今すぐ明るいところに連れ出したかったから。震え、止まったね」

「あ……」

それは、確かに。

「見て。空がきれいだよ」

真尋くんが空に向かって指をさす。
月明かりに照らされて、指先の形がしっかりと見える。

「本当だ……。明るい……」

今までは、停電の夜は暗いばっかりだったのに。

「こまり、無理に大丈夫にならなくていいよ。明るい場所なら、俺が用意する」

……眩しい。
真尋くんが、夜の光でキラキラしてる。
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