ひとつ、ふたつ、ひみつ。
「ありがとう。俺、仁村真尋(にむらまひろ)、17歳。よろしく」

あ、結構普通の名前だ。

「……(かすみ)こまり、です。16歳……。えっと、仁村くん? 真尋くん?」

「真尋でいいよ。こまり」

私は、いいとは言ってませんが。

「飛ばされたのが、話が分かる人の部屋でよかった」

話が分かるんじゃないの。
顔の良さで、あなたが見えない壁を突破しただけです。

ママと、外国でふたり暮らし。
初対面の同世代男子と、日本でふたり暮らし。

どっちが正解かなんて、本当なら考えるまでもないけど。

「……でも、女の子ひとりなのに、警戒心なさすぎるな」

「っ……!」

頬に触れられて、反射的に身を引く。

「大丈夫、何もしないよ。約束する」

その笑顔は、ズルいでしょ。

──大変不本意ですが、今日からふたり暮らしがはじまるようです。
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