ひとつ、ふたつ、ひみつ。
「で? どうだ、ひとり暮らし。なんか困ったことないか? “いつも困ったこまりちゃん”?」

「やめてよ、その呼び方~。あっくんのせいだからね、小学生の時からずっとそれで男子にからかわれてたの」

ニヤニヤ笑って近づくあっくんの顔を、手のひらで押し退ける。

くそぅ。こんなにでかく育っちゃって、手が届きづらい。

「困ってないよ。好きな時間に食べて寝て、めっちゃ快適だもんね」

「どうせ、それはいつものことだろ。だから、頭こうなってんのか」

後ろ髪に寝ぐせがあったらしく、あっくんが撫でてくれる。

「え? い、いいよ、自分でやるから」

「後ろ、見えないだろ。よし、さっきよりマシになった。90点」

寝ぐせの点数、大きいな。
残りの足りない10点も気になる。

気楽なひとり暮らし。
……の、はずなのに、隣の幼なじみがママみたい。

私に変なあだ名を付けた、小中一緒だった幼なじみは、高校まで一緒。

私はため息をついて、一歩先を行く背中を追いかけた。
< 5 / 262 >

この作品をシェア

pagetop