ひとつ、ふたつ、ひみつ。
電車に乗りこんだのはいいけれど、座るところがない。

真尋くんにとっては初めての電車だし、席に座ってゆっくりして欲しかったんだけどな。

「揺れて危ないから、つり革……えーと、これね。これをつかんで立つの」

「これ? 分かった」

「帰りは、座れるといいね」

「いや、大丈夫。……すごいな。途中の景色を見ながら、どこかに行けるなんて」

「普段は、ワープなんだもんね」

変な会話。
近くに知り合いがいませんように。

「不思議な感じがする。知らない人たちがたくさん同じ箱に乗って、同じ時間に、同じ場所に行くんだな」

電車に乗っただけでそんなに喜んでくれると、こっちまで嬉しい気持ちになる。

カーブに差し掛かった車内が、ガタンッと大きく揺れる。

「あっ……!」

真尋くんと話をしていて、注意を(そこ)なっていた手が、つり革から離れた。

真尋くんが片腕で支えてくれて、転ばずに済んだけど……、

「大丈夫?」

「ありがとう、真尋くん」

「うん」

「……あ、あり、ありがとう? ちょ、もう大丈夫だから」

「うん」

「ま、真尋くん?」

なぜか、離してくれない。
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