ひとつ、ふたつ、ひみつ。
「……もう、離していいよ?」

「こまりから抱きついてきたのに?」

「抱きついたわけじゃな……っ、わわ、もっとぎゅってしないで……っ!」

ますます肩を抱き寄せられて、私がつり革をつかめなくなる。

近くにいる人が、不審なものを見るかのような視線を向けてくる。

分かる。
私も、そちら側の立場なら、そうするかもしれない。

だってここのふたり、ただのバカップルでしかないもん。

違うんです。異世界人だから、こちらの常識を知らないだけなんです。……とは、言えない。

「真尋くん、人前では?」

見上げて、ジッと睨む。きっと真っ赤な顔をしていて、全く迫力はなかっただろうけど。

「人前では抱きつかない、人前以外ならいい」

「後半は、真尋くんが勝手に付け足したやつでしょ」

しかも、人前で抱きつかないって、分かってるんじゃん。

「あはは」

笑いごとじゃない。
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