ひとつ、ふたつ、ひみつ。
花恋の言わんとするところは、分からなくもない。

あっくんは、小学校の時は他の男子と同じで、クソガキ感満載だった。私に変なあだ名つけるし。

それが、中学に入って背が高くなって、大人っぽくなり始めた頃から、急に女子人気が高くなった。

高校生になった今も、その現象は健在のようで、放課後によく呼び出されている。

だけど、私にとってはずっと、隣の家の口うるさい幼なじみのままだし。

恋とか愛とか、そういう色づいたものは私たちの間には存在しない。

そんなことよりも。

「ねーねー、花恋。それよりもさ、昨日から私、ひとり暮らしなんだ~。今度、休みの日に泊まりに来てよ~」

花恋は(あき)れたように「はぁ……」とため息をついて、右手で頭を抱えた。
そして、

「防犯対策、しっかりね。知らない人が来ても、家に入れちゃダメだよ」

と、小学生がお留守番する時の注意のような小言をこぼした。

「大丈夫だよ。ひとりで家に残されるの、初めてじゃないんだから」
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