ひとつ、ふたつ、ひみつ。

ある程度周りを見て回って、最終的にはレストラン近くのベンチに座ることで落ち着いた。

今日が晴れてて、よかった。

「ここは、こまりがよく来る場所?」

「私? ううん。五歳くらいかな。まだパパがいた時に、ママと三人で来たの。それから、全然だよ」

「パパがいた時って?」

「あ、そっか。話してなかったよね。うちの親ね、私が小さい頃に離婚してるんだ。私は、ママに引き取られたの」

私たちの目の前には、花畑が広がっている。
ここからの景色は一度見たきりなのに、ちゃんと記憶に残っている。

「このベンチで、お弁当食べたんだ。なつかしいな」

小さな私。両隣に、パパとママがいて。
みんなで、笑っていたと思う。あの頃は、まだ。

「ママは仕事で家を留守にすることが多くて、パパはさみしかったんだって。知らない女の人と、出ていっちゃった。ひどいよね」

最後に、パパと交わした言葉はなんだっただろう。
もう、何も覚えていない。声も、顔も。

「あ、ママはね、今、海外赴任中なの。それまでも出張は多かったから、私はずっとひとり暮らしみたいなものだったんだけど」
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