ひとつ、ふたつ、ひみつ。
あの時は、真尋くんが不審者でしかなくて、あんなに怖かったのに。

思い出すと、笑ってしまう。
私、下着泥棒だって勘違いしてたもん。

「私ね、真尋くんがうちに来てから、さみしいって思う暇がないんだよね。距離の詰め方とんでもないし。おはようからおやすみまで、ずっとくっついてくるし。まだ三日しか経ってないのに、すごく一緒にいる感じがする」

「こまり、それ、困ってたんじゃないの?」

「もちろん困ってるけど。……って、やっぱり分かっててやってたの?」

「どう思う?」

はぐらかすように笑って、真尋くんは私の頭を何度も撫でる。

「よしよし」

「え、な、なに、なに?」

「ん? こまりがいい子で、えらいから。()めて、甘やかしたい」

なんでだろう。
何回もぎゅってされたり、手を繋いだりしてるのに。
それよりも、ドキドキする……みたい。

急に決めたことだから考える暇もなかったけど、幸せな思い出があるからここに来るのはずっと怖かったはずなのに。案外平気。

真尋くんが、一緒にいるおかげかな。
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