ひとつ、ふたつ、ひみつ。
昨日はすごく暑かったのに、今日は風が涼しくて気持ちがいい。
ポカポカと、心地のいい暖かさ。

眠っちゃいそう。

真尋くんはただ、私の隣で景色を(なが)めている。

「真尋くん、暇じゃない? 他のところ、行かなくて大丈夫?」

「うん、全然。ずっと、ここにいたいくらい」

「……」

そう言いながら、真尋くんの目はこの世界にないような気がして、私は無意識に、隣の服の袖を指でつまんだ。

「ん? どうしたの、こまり」

「ううん……」

本当は、元の世界に帰りたいくせに。
あんなに真剣な顔で、機械を直そうとしてたくせに。

今日の天気みたいに穏やかな笑顔が、私に向けられる。

「俺の住んでる日本には、こんな場所がないんだ。狭い土地に高い建物ばかりが建っていて、上を向いても空なんか見えない。こまりがいる世界は、素敵なところだね」
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