ひとつ、ふたつ、ひみつ。
屋上の扉を後ろ手に閉めて、一度深呼吸。
額に手を当てて、息を止めた。

「っ……」

油断してた。
最近は、抱きしめるくらいしかなかったから。

いや、それもおかしいんだけど。

……困ったな。
ドキドキするのは、慣れないのは。真尋くんの顔が好みすぎて……だけじゃ、なくなっている気がする。

私は靴を脱いで、階段を駆け下りた。



昇降口まで行って、上履きを履いて、教室へ。

ワープは便利だけど、学校に行くことを考えたら、上履きを持って帰る必要があるな……。

教室に入ると先生はまだ来ていなくて、クラスメイトたちは各々(おのおの)が自由に過ごしている。

私は自分の席にかばんを置いて、ペンポーチを机に出した。

「遅い」

私を見つけるなり、目の前でクレームをつけてきたのは、あっくん。

「でも、まだ先生来てないよ?」

「チャイムは鳴ってただろ」

「そんなことな……」

危ない。実はあっくんよりも先に学校には来ていた……とか、言いそうになった。

「……うん、そうだね。次からは気をつけるよ」

「お前は、本当に俺がいないとだめだな」
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