ひとつ、ふたつ、ひみつ。
だめだろうなぁ。
不審(ふしん)がられて、どうせまた却下されるだけ。

……と、思っていたら。

「しょうがねーな」

「え」

「分かった、貸してやるよ」

なんで?
私が言うのもなんだけど、なんで気が変わったの?

私が同じ立場なら、多分貸さないよ。理由がないのなんて、なんか怖いもん。

「ありがとう……。あの、あっくん……」

「なんだよ」

「顔赤いけど、どうかした?」

「うるせ。見んな。貸さねーぞ」

「あ、うん、ごめん?」

口元に手の甲を当てて私から顔を背ける姿を視界に入れないように、私は下を向いた。

なんだかよく分からないけど、これで真尋くんが校舎の中に入れる。
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