ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「お待たせ、真尋くんっ」

朝のホームルームが終わり、屋上の床に座って空を見ていた真尋くんに、声をかける。

私の手には、あっくんに借りたばかりのジャージの上着。

「こまり、会いたかった」

「!?」

離れていた時間は、30分もなかったと思う。
それだけで再会を喜んで、抱きしめてくるって、どういうこと。

「こ、こら、すぐ抱きしめないの……!」

「うん、ごめんね」

絶対に思ってないよ。
めちゃくちゃ口だけだな。

「はい。あっくんから指定のジャージ借りてきたから、これで学校の中に入れるよ」

「……」

真尋くんは、ジャージを受け取りはしたものの、両手で広げて、変な顔をしている。
なんていうか、不機嫌そう?

「これ、幼なじみくんのなの? なんかやだな」

「えっ? あ、真尋くん背が高いから、サイズ合わないよね。ちょっとちっちゃいかも」

「そういう意味じゃないけどね」

「洗濯してあるから、綺麗だと思うよ」

「違うよ」

「?」

「まぁ、分かんなくてもいいけど」

と、真尋くんはジャージの上着を羽織(はお)った。
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