ひとつ、ふたつ、ひみつ。

私がそうしたように、真尋くんにも靴を脱いでもらって、屋上から抜け出す。

裏庭にある水道で靴の裏を洗い流したら、準備完了。

学校の中に入れたからといって、どこかの授業に出られるわけじゃない。

私たちはひとまず、ふたりで図書室へ移動することにした。

目立たないように、こっそりと。
……の、つもりだったのだけど。

「え、待って、イケメンが歩いてる。いたっけ? あんな人」

「あの人に今まで気づかなかったとか、あるわけなくない?」

「休んでた先輩とかなのかな」

「名前聞きたーい」

廊下を歩くだけで、ものすごく見られている。
私じゃなく、真尋くんが。

目立ちすぎている。

真尋くんをイケメンだと思うのって、私だけじゃなかったんだ。
当たり前だよね。
おまけに背はスラッと高いし、芸能人みたいなんだもん。

「真尋くん、あとでマスクしようね。私、教室から持ってくるから」

「なんで?」

「なんででも。絶対に」

私がここに連れてきたくせに、早くも真尋くんを隠したい。
この自分勝手な気持ちは、なんだろう。
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