ひとつ、ふたつ、ひみつ。
図書室は、いつも人がいない。
図書委員会も、放課後にしかカウンターに来ない。

だから、屋上以外で、こんなに絶好の隠れ場所もない。

なんて、そうこうやっているうちに、一時間目の授業が始まってしまう。

なんだっけ。
あ、そうだ、世界史だ。

やばいな、今日当たる日だったんだ。
予習なんか、一切していない。

「うう……、やだな。授業行ってくるね。終わったら、またすぐ来るから」

真尋くんに、図書室のはしっこの席に座ってもらって、私はひとりで立ち去ろうとするけど。

「嫌なら、行かなくてよくない? 俺と一緒にいようよ」

「え」

何その甘い誘惑は。

しかも、しっかり腕をつかまれているし。

「で、でも私、授業ってサボったことがなくて……」

「じゃあ今日だけ、悪い子になってみる?」

椅子に座って、見上げてくる瞳が可愛い。

それに、負けそうで、負けそうで……。
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