冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「裕翔さん……?」
すぐそばで細い声が聞こえ、そっと背もたれに抱いた体を倒した。
潤んだ目は、じっと真っ直ぐ目を見つめてくる。
困らせたくはない、でももっと彼女を知りたい。その気持ちがせめぎ合う。
窺うようにして距離を縮め、そっと唇を奪う。
わずかに肩が揺れたのは動揺したからだろう。絡まる彼女の指先がほんの少し手を握ってきたのを感じて、口づけを深めた。
「……っ、ひ、ろと、さん」
呼吸の仕方を忘れてしまったような声に理性を失いかける。
桜色の小さな唇を自由にし、白い首筋に口づけた。
「っ、あ」
今は、これ以上はまずい。
暴走しかける自分を思いとどまらせ、知花の体を再び抱きしめた。
「悪い……これじゃあ、招き狼だな」
しばらく、気持ちを落ち着かせるようにそのまま。
どんな顔を見せればいいのか、彼女がどんな表情なのかも目にする勇気がなかった。
「ケーキ、切り分けよう」
やっと腕を解くと、何事もなかったかのように振る舞う自分が自然と現れた。