冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
裕翔さんはいずれ、戸籍に傷のついていない女性と一緒になる。時が来れば、きっと……。
冷静になって現実を見据えると、急に切なさが襲い胸を締め付けられた。
今ここで見ていること、聞いていることが、嘘ではなかったらどれだけ幸せか……。
叶うはずもない、おこがましい願いが頭を過る。
「結婚は、知花とでないと考えていない。でなければ、一生独身を貫く」
私との結婚を反対され、認めないなら誰とも結婚はしない、独身でいる。これが、裕翔さんの最終目的地なのかもしれない。
お母様は困ったように眉を下げて「裕翔……」と力ない声で呼びかける。
「裕翔、お前の気持ちはできるだけ尊重してきたつもりだ。しかしな、今回の件は口を挟まないわけにはいかない。お前だってわかるだろう」
「そんなくだらない世間体のために、彼女を手放すことはできない」
お父様の威厳ある言葉にも裕翔さんは怯まない。
両者一歩も譲らない緊迫した空気の中、突然、どこからともなく豪快な笑い声が聞こえてきた。
「なんだなんだ、周年記念の会場前で揃って辛気臭い顔をして」
振り向くと、ご老人がひとり。となりに付き人を連れてこちらに向かってゆったりと歩いてくる。
ブラウンカラーのスーツに、ループタイを締め、被っているブラックの中折れハットを取ると、見覚えのある顔がにっこりと笑っていた。
この方は、あの電車の……裕翔さんのお祖父様!