冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「裕翔、知花さん。後日、時間を作ってほしい」
お父様はそう言い、お母様は頭を下げ、ふたり揃って会場へと向かっていった。
再びふたりきりとなり、裕翔さんを見上げる。
「あ、あの、裕翔さん。今ので良かったんですか?」
「なにがだ」
演じているのはわかっているけれど、あそこまで明確に言ってしまうのは今後に差し支えないだろうか。
あんなに寄り添ってくれるお祖父様まで騙す形になっていることに心が痛む。
「ご両親にも、お祖父様にも、あんな風に……」
やっとふたりで話し始めたのも束の間、「七瀬CEO」と周囲から声がかけられる。
気づけば周辺にはこちらに注目している人々が複数いて、今がチャンスと言わんばかりに近づいてくる。
自分たちの状況に気を取られて気づいていなかったけれど、ナナセの人々が集まって話している光景は間違いなく目立ち注目の的になっていたに違いない。
裕翔さんは声をかけてきた男性に「ああ、どうも」と顔見知りである対応で接した。
式典の出席者で、なにかの来賓の方だろう。