冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「おはようございます。すみません、お待たせしました」
扉を開けると、今日はダークグレーのスリーピースにブラウンのネクタイが決まっている七瀬CEOが。
「来客をモニター画面で確認しないのか」
「あ、いえ、普段は応答してから出ています。ただ、今は七瀬CEOが見えて驚いてしまって……」
「そうか。社用マンションでセキュリティ面は安心といっても、いきなり開けるのは危ない。物騒な世の中だからな」
心配の言葉をかけてもらい、「すみません、ありがとうございます」と答える。
「少し早かったか」
「いえ、もういつでも出られる状態ではあります」
「それなら、もう向かってもいいかもしれない」
腕時計に目を落としながら七瀬CEOが言う。
「わかりました。今、出る支度をしてきます」
一旦ドアを閉め、急いで用意しておいたバッグを手に部屋の明かりを消す。
そそくさとパンプスに足を入れ、再び玄関ドアのノブを掴んだ。
「お待たせしました」
「待ってない、数十秒だ。待っているうちに入らない」
「はい、でも、お待たせはしているので」
相手は自社のCEOだ。常に気を使うのは自然の行動。数十秒だって自分のためにお待たせするなんて考えられない。
先を歩く七瀬CEOについてエレベーターに乗り込む。
朝起きたときから増し始めた緊張は、彼の登場によってうなぎ上り。
このままいけば、ご両親に対面する食事の席では意識がぶっ飛んでいるかもしれない。
そんなことにでもなって迷惑をかけたら取り返しがつかない。