冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
ホテルのエントランスに入っていくと、巨大な赤薔薇の装花が出迎えてくれる。一体何本の薔薇を使っているのかわからないけれど、薔薇で巨大な球体を模していて見事だ。
私がそれに見惚れているうち、どこからともなくホテルスタッフが近づいてくる。
こちらから出向かなくても人が声をかけてくるなんて七瀬CEOクラスなら当たり前なんだろうけど、私にはすべて初めての体験だ。
「七瀬様、お待ちしておりました。ご案内いたします」
スムーズに案内され、スーツ姿のスタッフに続いていく。
その間も七瀬CEOは私の手を繋いだままで、車を降りたときから引き続き心臓は落ち着かない。
婚約者と見せるための演出とはいえ、事実手を握られているのだ。
「こちらです、どうぞ」
日本の迎賓館として愛されてきた老舗ホテルは、どこを見ても重厚で格式高い。
案内されたのは、花柄の絨毯が敷き詰められたヨーロピアンテイストの部屋。結婚式などの控え室のような感じの個室だ。
こんな場所になぜ案内されたのかと不思議に思いながら、すすめられたソファに腰を下ろす。
てっきり、ご両親との待ち合わせのレストランに向かうと思っていた。
スタッフが「少々お待ちくださいませ」と部屋を出て行き、七瀬CEOと再びふたりきりになった。
「あの、ここは……?」
「婚約者を演じてもらうために、君をドレスアップしようと思って事前にお願いしていたんだ」
「あ……だから、体ひとつでなんて言われていたんですか」