冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


 ホテルのエントランスに入っていくと、巨大な赤薔薇の装花が出迎えてくれる。一体何本の薔薇を使っているのかわからないけれど、薔薇で巨大な球体を模していて見事だ。

 私がそれに見惚れているうち、どこからともなくホテルスタッフが近づいてくる。

 こちらから出向かなくても人が声をかけてくるなんて七瀬CEOクラスなら当たり前なんだろうけど、私にはすべて初めての体験だ。


「七瀬様、お待ちしておりました。ご案内いたします」


 スムーズに案内され、スーツ姿のスタッフに続いていく。

 その間も七瀬CEOは私の手を繋いだままで、車を降りたときから引き続き心臓は落ち着かない。

 婚約者と見せるための演出とはいえ、事実手を握られているのだ。


「こちらです、どうぞ」


 日本の迎賓館として愛されてきた老舗ホテルは、どこを見ても重厚で格式高い。

 案内されたのは、花柄の絨毯が敷き詰められたヨーロピアンテイストの部屋。結婚式などの控え室のような感じの個室だ。

 こんな場所になぜ案内されたのかと不思議に思いながら、すすめられたソファに腰を下ろす。

 てっきり、ご両親との待ち合わせのレストランに向かうと思っていた。

 スタッフが「少々お待ちくださいませ」と部屋を出て行き、七瀬CEOと再びふたりきりになった。


「あの、ここは……?」

「婚約者を演じてもらうために、君をドレスアップしようと思って事前にお願いしていたんだ」

「あ……だから、体ひとつでなんて言われていたんですか」

< 32 / 172 >

この作品をシェア

pagetop