冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
車は走り始めて十分ほどで目的の老舗ホテルへと到着する。
七瀬CEOは車寄せに停車し、運転席を降車した。
ここで降りるのかと彼の動向を窺っていると、七瀬CEOが助手席へと回って来る。
ドアを開けられ、慌ててシートベルトを外した。
「ここで降りよう」
「あ、はい。あの、自分で降りますので七瀬CEOがこのようにドアを開けてくださらなくても」
どちらかというと私がドアを開けにいく立場だ。
しかし、その言葉も聞こえていなかったように、七瀬CEOは私に向かって「手を」と左手を差し出す。
驚いたものの、言われた通り自分の手を重ね乗せた。
取られた手はそっと握られ、私の降車を手伝う。
「ここからはもう、君は俺の婚約者だ」
車から降ろされたと同時、耳元に近づいた彼の唇が囁く。
急な接近に一気に鼓動が跳ね上がり、顔が熱くなるのを感じた。
「それから、その呼び方も婚約者ならおかしい」
ドアを閉め、私の手を引いて歩きだした七瀬CEOは、また長身を屈めて私の耳元でそう意見する。
確かに、婚約するくらい真剣交際ならそんな呼び方はしていないはず。
「じゃあ、 裕翔さん、ですかね……」
恐れ多すぎて口にするのも緊張するのは仕方ない。
これは演技なんだからと、冷静になって自分を落ち着かせる。
「そうだな、それでいい」