冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


「あ、はい!」


 返事をすると、開いたドアの先から七瀬CEOが顔を見せる。

 私は立ったまま、入ってきた七瀬CEOが頭を下げた。


「支度が済んだと聞いて戻ったが……」


 私の姿を上から下まで見ながら近づいてくる七瀬CEOに、自然としゃんと背筋が伸びる。


「すごくいい、似合っている」

「えっ、いや、そんなことは全然!」


 ほとんど反射的にそう言葉を返していて、自分が途轍もなく失礼なことを言っていることに後になって気づく。


「あ、全然というのは、私の身の丈には勿体ないということで、その、似合っているという言葉に対してではなくっ」


 慌てて訂正をする私の前まできた七瀬CEOは、気が抜けたようにふっと笑う。

 そして、私の頭の上にそっと手をのせた。


「わかってる。そんな必死に弁解しなくてもいい」


 髪が崩れない程度に優しく撫でられ、静かだった鼓動がドキッと音を響かせた。


「それに、身の丈に合ってないなんてこともない。自信を持っていい」

「は、はい……ありがとうございます」


 今日こうして会うまで、七瀬CEOは利益のためには厳しく冷酷に物事を処理する人だと認識していた。

 それは仕事上では間違いなくそうで、だからこそうちの会社が常に上向きなのが証明している。

 そんな人間は、きっと人柄自体が〝冷〟の一文字がイメージぴったりの人だと思っていた。

 冷静、冷酷、冷然……。

 良くも悪くも冷たい単語で溢れているような、そんな人だとばかり思っていた。

 だから、こんな風に気遣いや優しい言葉をかけられるとは思っていなかったし、想像もできなかった。

 今日は仕事と切り離したプライベートな事情で一緒に過ごしているけれど、もしかしたらオフでは別人のような人なのかもしれない。

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