冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


「こちらでいかがでしょうか」


 鏡越しににこやかに声をかけられ、「はいっ」と頷く。


「七瀬様の仰る通り、それほどお手伝いすることもなかったのですが」

「いえ! こんなに綺麗にしてもらって、ありがとうございます」


 スタッフの女性は「いえいえ」とやっぱりにこやかにメイク道具を手早く片付け、「失礼いたします」と部屋を出て行った。

 ひとりになり、鏡の中の自分と見つめ合う。

 ヘアメイクは自分なりにしてきたから、メイクは普段行き届かない部分をしてもらい、髪は同じハーフアップでも編み込んだ凝ったアレンジにつくってもらった。

 やっぱり、プロの手によって施されるヘアメイクは格別。自分では技術的に難しいからこそ感動が大きい。

 それに、この装い……。

 椅子から立ち上がり、全身を映してみる。

 七瀬CEOが用意していたというワンピースをスタッフの方から受け取って、着替えるときにハッと驚いた。

 いざ着替えようとすると、それが海外のハイブランドのものだとわかったのだ。

 驚いて手が止まったのは言うまでもない。

 普段着ている服とは桁が違う高級品に袖を通すのは、いいのだろうかという躊躇いもあったけれど、落ち着いて考えてみると七瀬CEOの婚約者という〝設定〟なのだ。

 私個人の価値観は捨てて、身なりだってなり切らないといけないわけで……。

 そう考えを改めると袖を通すことができた。

 明るめのグレージュカラーのAラインワンピース。上品な膝下丈で、目立つデザインはないものの着た姿が美しくてさすが一流ブランドだと驚愕だった。

 これならいいところのお嬢さんに見えなくもない。

 ここに来たときよりもぜんぜん雰囲気が変わった自分に改めて感心していると、部屋の扉がノックされた。

< 34 / 172 >

この作品をシェア

pagetop