冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「両親はあと十分程度で到着すると連絡が入った。先に席についていよう」
「はい、わかりました」
個室を出て、向かった先はホテル二階の三ツ星フランス料理レストラン。
当たり前のように個室に案内され、スタッフの引いた椅子に腰を下ろす。
いよいよ本当に粗相のできない時間が近づいてくると思うと、視線も定まらず落ち着きなくあちこちを見てしまう。
「見合いは勧められてきたが、今回本命の女性がいると話したらそれはそれで会うのを楽しみにしている両親だ。そんなに硬くならなくていい」
「はい」
そうは言われても、力が抜けるわけもなく、空返事になってしまう。
そんな調子でいると、突然「知花」と、横から七瀬CEOが私の手を掴んだ。
何事かと目を向けると、優しく手を握られる。
「やっぱり、緊張してるな」
「へっ」
「脈が速い」
どうやら手首で確認されていたらしく、私のドキドキを言い当てられてしまった。
七瀬CEOは手を繋いだまま「リラックス」と微笑む。
それが逆効果と言わんばかりに私の鼓動を暴走させ、手が離されてもテーブルの上一点を見つめて必死に気持ちを落ち着かせていた。
「気負うことはない。いつも通りの君で両親に会ってもらえれば大丈夫だ」
「はい」