冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
なんだか、本当に真剣交際している相手のご両親に挨拶をする前みたいな緊張感だ。
七瀬CEOが、こんな風に時折気遣ってくれたり、優しく微笑んだりするから、変な錯覚に陥りそうにもなっている。
さっきからそのたびに、違う違う!と自分を落ち着かせている。
私たちが席について十分もしないうち、個室のドアがノックされた。
「失礼いたします、お連れ様が到着されました」
椅子を立ち上がり、ご両親を迎える。
「待たせたな」
先に入ってきたのは、七瀬CEOのお父様。
七瀬CEOと同じくモデルのような高身長でスーツの様になるスタイルの良さ。
計算されたオシャレなグレーヘアで、二重ではっきりした目と高い鼻梁が印象的。微笑むと目尻にできた皺が優し気な印象を与える。まさに〝イケオジ〟という言葉に当てはまるタイプだ。
「お待たせしました」
その後に続いて入ってきたお母様も、すらりとした女性で目を奪われる。
黒いタイトスカートのスーツを見事に着こなされていて、長い黒髪は艶のあるゆるふわ。アーモンド型の目元はまつ毛も長く、色白で美しい顔立ちはベテラン女優さんにでもいそうな存在感だ。
このふたりから誕生したのが、このとなりにいる七瀬CEOというのがすごく納得できる。
富も名誉もある上に、揃ってこの容姿。すごい完璧な一家だ。
「今日はありがとう。こちらが会ってほしいと話した、唐木田知花さん」
七瀬CEOからの紹介を受けて、ご両親に向かって頭を下げた。